見えないここ
ある惑星が他の惑星の重力に抗えないのとほとんど同じ様子で、人間も互いの存在の影響から自由になれた歴史はなく、物質が重力に捕われたまま運命を預けてしまうように、人間も自らの感情の支配から無重力に至ることはない。
突き刺さること
我々人間自身が自ら家畜化していると云われる現代において、命の役割と生きる意味とを独学で発見するというのは、殊のほか荷が重い。
リードする言葉
言葉を持たない動物が、愛や幸せを本当の意味で解っていると仮定するなら、明らかに彼らはそれらを極端に深くは追い求めていない。そう考えると、言葉は悟るための道具ではないらしいことが見えてくる。
悔恨
何か思わぬ失敗をやらかしたり、謂れの無い不運に遭遇してしまうと、僕自身は根拠も無いのに、何かのバチが当たったに違いないと因果関係を求めてしまう。
記憶の系統
美しいものを美しいと感じることの本質は、理論体系に頼るのではなく、人類が重ねて来たであろう経験の記憶を呼び覚まして、個人個人がそこに輪郭を与えられるかどうかなのではないか。
真実を観る眼差し
集中して、意味もなく、しかしながら被写体との遭遇という明確な目的をもって散策してみると、自分の視点が一体誰の視点であるべきなのか、という命題にぶつかる。
鎮魂のIIIa
向田邦子さんの素敵なポートレイトを撮影された彼女のフィアンセが、向田さんに持たせたBarnack III型、あの写真が撮られていなければ僕はきっと、一生、このIIIaを手にすることはなかったと思う。
飽食時代
効率は高ければよい、というものではなく、自分にとって馴染みやすいかどうか、という直感的な要素も実は大切である。
意味するところは
作品の“意味”を定期的に問われるのは、何かしら意図を持って僕が制作に挑んだのだと思われるからに相違ない。人間の行動には意味がある、のかどうかは知らないが、そう考えたいのが人間である。
Statement
その世界で頂点が在るのであれば、頂点の存在はその下の重厚な土台、膨大な堆積物を必要とする。堆積物の量が膨大であればあるほど、頂上は羨望の眼差しで仰ぎ見られることになる。